ドクターブログ

認知症と歯周病ケア

 歯周病と認知症は、口腔ケアと密接に関連している疾患です。歯周病は歯肉や歯を支える組織が炎症を起こす病気であり、放置すると歯を失うだけでなく、全身の炎症を引き起こす可能性があります。認知症は脳の機能が徐々に衰えていく病気であり、認知機能や判断力、記憶力が障害されます。

 口腔ケアが重要な理由は、口の中は全身の健康と密接に関連しているからです。歯周病の菌が血管を通って全身に影響を及ぼすことが示唆されており、疾患の進行が心臓病や糖尿病、認知症といった慢性疾患のリスクを高める可能性があります。特に認知症との関連性が注目されており、歯周病の進行が認知症のリスクを高めるとされています。

 口腔ケアを含めた予防策としては、定期的な歯科検診や歯磨きを丁寧に行うことが重要です。また、ハブラシやデンタルフロスを使用して歯垢やプラークをきちんと除去し、口臭や虫歯、歯周病の予防に努めることが必要です。歯周病が進行している場合は、歯科医による適切な治療を受けることが重要です。

 口腔ケアの重要性は、全身の健康にとっても重要な要素であり、特に認知症などの慢性疾患との関連性が指摘されています。定期的な歯科検診や適切な歯磨きを習慣化し、歯周病や認知症などのリスクを軽減することが大切です。口腔ケアを含めた予防策をしっかりと実践し、健康な口腔環境を維持することが重要です。

歯周病による咬合の崩壊

 歯周病は、歯周組織の炎症や破壊を引き起こす慢性的な疾患です。重度の歯周病では、歯肉の炎症が進行し、歯周組織や骨が破壊されることがあります。

歯周組織や骨の破壊が進行すると、歯の支持組織が弱くなり、咬合(かみあわせ)に悪影響を及ぼすことがあります。具体的には、以下のような咬合高径の減少が引き起こされる可能性があります。

歯の移動: 歯周病によって歯の支持組織が破壊されると、歯が移動しやすくなります。これにより、咬合高径(上下の歯が咬み合った時の歯の高さ)が変化し、減少することがあります。

歯の抜け落ち: 歯周病が進行すると、歯の支持組織が弱まり、歯が抜け落ちることがあります。歯が欠損すると、その部位の咬合高径が減少します。

骨の破壊: 歯周病が進行すると、歯周組織だけでなく、周囲の骨も破壊されることがあります。骨の破壊により、歯の支持組織が弱まり、咬合高径が減少する可能性があります。

顎関節の変化: 歯周病による咬合の問題は、顎関節にも影響を及ぼすことがあります。歯周病によって歯の位置が変化すると、顎関節の負担が増加し、関節の機能が低下することがあります。このような状況では、咬合高径が減少する可能性があります。

以上のように、重度の歯周病は歯周組織や骨の破壊を引き起こし、咬合高径の減少をもたらす可能性があります。このような状況では、咬合の安定性や咀嚼機能に影響を及ぼすことがあるため、早期の歯周病治療が重要です。

年末年始休診

12/30(木)~1/4(木)まで休診致します。

常在フローラと歯周病

フローラとは、人間や動物の体内に存在する微生物の総称です。口腔内においても、細菌や真菌などの微生物がフローラとして存在しています。一方、歯周病は歯肉の炎症や歯槽骨の破壊などを引き起こす疾患です。

フローラと歯周病の関係について考察すると、以下のような点が挙げられます。

フローラのバランスの重要性: 正常な口腔内フローラはバランスが取れており、病原性微生物の増殖を抑制する働きがあります。一方、フローラのバランスが崩れると、歯周病の発症リスクが高まると考えられています。

病原性微生物の関与: 歯周病の主な原因は細菌感染です。特に、歯垢中の一部の細菌が歯周病の病原性因子を産生することが知られています。これらの病原性微生物は、フローラのバランスが崩れた際に増殖し、歯周病の進行を促進する役割を果たすと考えられています。

フローラの調整による予防・治療: 歯周病の予防や治療には、フローラのバランスを調整することが重要です。口腔内の清潔な状態を保ち、病原性微生物の増殖を抑えることで、歯周病の進行を予防できる可能性があります。また、歯周病の治療には抗生物質や抗菌薬の使用が一時的に行われることもありますが、これらもフローラの変化による影響が考慮される必要があります。

以上のように、フローラと歯周病は密接な関係があります。正常なフローラのバランスを維持することが、歯周病の予防や治療において重要な要素となります。今後の研究や臨床実践において、フローラと歯周病の関係をより詳しく解明し、効果的な予防・治療法の開発に役立てていくことが望まれます。

三叉神経痛と歯痛

 三叉神経痛は、三叉神経が炎症や圧迫によって刺激されることで起こります。この痛みは、顔の一側に強い痛みを引き起こす神経疾患であり、歯痛のような症状を伴うことがあります。三叉神経は顔面の感覚を制御しているため、刺激されると激しい痛みを引き起こすことがあります。この痛みはしばしば突然現れ、鋭く、地雷のような衝撃痛として表れることがあります。また、感染症や炎症、神経の圧迫などによって顔面や口腔のどの部位でも痛みを引き起こすことがあります。
歯痛は、歯の神経が刺激されることによって引き起こされる痛みです。虫歯や歯周病などの歯の病気、歯の骨折、歯冠炎などが原因となります。歯痛は一般的に鋭く、ドラムのような痛みを引き起こし、痛みが続いても脈動しないことが特徴です。
 三叉神経痛と歯痛の関連性は、三叉神経痛の症状が歯痛として現れることによって生じます。たとえば、三叉神経が歯の近くで足りなくなることで、歯の痛みを引き起こすことがあります。また、歯痛が三叉神経の刺激によって起こることもあります。三叉神経の激しい痛みが歯痛として感じられることがあります。
 三叉神経痛と歯痛の鑑別診断は、正確な診断と適切な治療のために重要です。歯科医師は、歯の健康状態を評価し、他の可能性を排除するために必要な検査を行います。三叉神経痛の場合、神経ブロックや抗痛み薬の処方などの治療法が一般的です。歯痛の場合、歯の治療が必要な場合があります。
 したがって、三叉神経痛と歯痛は関連性があり、互いの症状が混同されることがあるため、適切な診断と治療が重要です。歯痛や顔面の痛みが継続する場合は、すみやかに歯科医師に相談することをお勧めします。

MTAセメントという覆髄材

 普段のカリエス治療の中で虫歯を取り除く際に、大きく穴が開き歯髄が露出することがよくあります。このような場合、抜歯するか直接覆髄するかについて毎回悩むものですが、私は「最良の根管充填材は患者自身の歯髄である」という信念のもと、MTAセメントを用いた直接覆髄を積極的に行っています。
最近、ネオ製薬工業から、「キャビオス」という光重合型裏層材の改良版である「D-キャビオスMTA」が発売され、試用する機会を得ました。元のキャビオスは、歯の硬組織成分であるα-TCPと混ぜ合わせた材料で、生体親和性が高い素材ですが、露髄した場合は使用できませんでした。 しかしながら、D-キャビオスMTAは、a-TCPの代わりにMTAを含有しており、新製品として直接覆髄材として承認されています。偶発的な露髄に直接覆髄を行う場合、ラバーダム防湿と止血が必要であることに留意し、露髄面が2mm以内である場合に成功すると考えられます。作業環境が整ったら、歯髄に圧力をかけないように生理食塩水で洗浄消毒し、止血後に適量を充填して硬化させます。他のMTA製品よりも硬化後に硬さを感じ、曲げ強さや圧縮強さなど十分な強度があることが確認されました。また、高いX線造影性も持っています。

難治性姿勢上顎洞炎

 難治性の歯性上顎洞炎は、上顎洞内で起こる炎症であり、感染によって排泄物が自然口を通り鼻腔内へと排泄されます。上顎洞内には多列繊毛上皮で覆われた粘膜が存在し、健康な状態では上顎洞内に生息する菌もこの繊毛運動によって除去されます。しかし、炎症が持続し、自然口の封鎖や繊毛運動機能の低下が生じると、排泄がうまく起こらず、炎症は長期化することがあります。歯科においては、歯の治療による原因の解消、根管治療、外科的歯内療法などが行われますが、症状が改善しない場合には医科的なアプローチが必要となります。医科歯科共同のアプローチが求められるケースもあるため、治療方針をめぐり患者が混乱することも少なくありません。
 治療においては、隣接医科領域の知識に加え、原因である根尖性歯周炎に対する高度な治療が必要とされます。また、医科歯科の連携を適切なタイミングで行うことが重要であります。現在、歯科と耳鼻咽喉科による引き続きの経過観察が必要です。上顎洞は、解剖学的に歯科と耳鼻咽喉科領域にまたがっているため、関連する専門医の共同作業が求められています。

高齢者の中性電解水による洗口と義歯洗浄

義歯洗浄により義歯の汚れが完璧に除去できたとしても、再び装着すれば口腔内微生物との接触は必ず起こる.しかし,洗口や残存歯の清掃により口腔内微生物を減少させ
ることは,清掃した義歯への付着微生物を減少させ,これらの付着微生物に起因するプラーク形成を抑制して口腔環境の向上につながる.すなわち,口腔内と義歯の両方の洗
浄が口腔環境を大きく左右する. 健康な成人に対する臨床試験の結果から,中性電解水は唾液や正常細菌叢への影響がイソジンガーグル液と同等であり,口腔ケアへの応用が可能であるとしている.中性電解水は,既存の義歯洗浄剤や洗口剤とは全く異なり,義歯と口腔内の両方の洗浄が可能であるという点が利点である.口腔内の清掃として, 口腔粘膜や舌の清掃も重要である。 要介護高齢者においては,加齢,薬剤の服用、認識力の低下および口呼吸等により口腔乾燥が顕著であることも多く, スポンジブラシや舌ブラ整えたうえで行ったほうが良い 当分野では,中性電解水の有効成分が希望部位に停留して有効に働くように、中性電解水ジェル の開発・改良も行い,根管に対する洗浄および貼付で根管内の消毒・殺菌に有効であることを報告されている。

感染根管治療と抗菌薬

 不適切な処方が原因の抗菌薬の過剰使用は世界的な問題となっており、耐性菌の出現や全身的な副作用のリスク, 医療費の圧迫などが懸念されています。
現在,各国でガイドラインが発表され, 適切な抗菌薬の使用が勧告されています。抗菌薬の使用はあくまで治療の補足的な方法であり, 感染の拡大予防, 全身的な関与を伴う急性根尖膿瘍, 進行性 持続性のある感染症に適応となる。 壊死した歯髄組織には血管は新生せず, 抗菌薬が感染部位に十分に到達しないことから、症状の改善には根管処置行う必要がある。根尖膿瘍においても切開, 排膿などの消炎処置を行い,嫌気環境を改善しないと薬効を低下させてしまうのです。
 各国で抗菌薬の使用状況について調査されているが,不必要な処方の要因として, 処置に対する時間不足,患者からの要望といったものが主にあげられます。これらは日本の歯科医療現場でも同様である.歯科医師も簡単に処方しがちであるが,その判断基準は経験的なものが多いのではないだろうか。抗菌薬の使用についてはリスクを伴うことを十分に理解し、患者にその必要性について説明できなければならない. 抗菌薬の使用は、 症状および患者の状態をよく確認し,その必要性を正当化できるかが重要であり, 過剰処方を可能な限り避けることが望ましいと考えます。 

高齢化社会におけるインプラントオーバーデンチャー

 超高齢社会におけるインプラントオーバーデンチャー(IOD)
近年、インプラントの安定性が得られ、40年を超える長期症例がみられるようになってきた反面,患者の高齢化による身体的制限, 虚弱化により患者が補綴物に適応できなくなるといった問題点も浮き彫りになってきています。ジュネー 大学のMüllerらは、現在と将来の患者に適応するために,固定性インプラント補綴物は、 はじめは 次にスタッドタイプやボール, さらに維持力の弱いマグネットのように、将来のオーバーデンチャーにむけてデザインされるべきであると提唱しています。
 超高齢化社会である日本での実態をみてみると,平成28年度の歯科疾患実態調査において, インプラント装着者は65歳以上では約3~4.6%を占める (図20) 2016年に公益社団法人日本口腔インプラント学会が行った調査では、回答があった歯科訪問診療を行っている歯科医師291名が診察した患者 12,356 人の7割はセルフケアが困難な状況であり, うちインプラントを有する360人のうち8割が固定性補綴を有していると報告されています。またインプラントに関したトラブルとしては、47%が清掃困難, 39% がインプラント周囲炎です。

お問合せ