
2023年4月28日
普段のカリエス治療の中で虫歯を取り除く際に、大きく穴が開き歯髄が露出することがよくあります。このような場合、抜歯するか直接覆髄するかについて毎回悩むものですが、私は「最良の根管充填材は患者自身の歯髄である」という信念のもと、MTAセメントを用いた直接覆髄を積極的に行っています。
最近、ネオ製薬工業から、「キャビオス」という光重合型裏層材の改良版である「D-キャビオスMTA」が発売され、試用する機会を得ました。元のキャビオスは、歯の硬組織成分であるα-TCPと混ぜ合わせた材料で、生体親和性が高い素材ですが、露髄した場合は使用できませんでした。 しかしながら、D-キャビオスMTAは、a-TCPの代わりにMTAを含有しており、新製品として直接覆髄材として承認されています。偶発的な露髄に直接覆髄を行う場合、ラバーダム防湿と止血が必要であることに留意し、露髄面が2mm以内である場合に成功すると考えられます。作業環境が整ったら、歯髄に圧力をかけないように生理食塩水で洗浄消毒し、止血後に適量を充填して硬化させます。他のMTA製品よりも硬化後に硬さを感じ、曲げ強さや圧縮強さなど十分な強度があることが確認されました。また、高いX線造影性も持っています。
2023年4月26日
難治性の歯性上顎洞炎は、上顎洞内で起こる炎症であり、感染によって排泄物が自然口を通り鼻腔内へと排泄されます。上顎洞内には多列繊毛上皮で覆われた粘膜が存在し、健康な状態では上顎洞内に生息する菌もこの繊毛運動によって除去されます。しかし、炎症が持続し、自然口の封鎖や繊毛運動機能の低下が生じると、排泄がうまく起こらず、炎症は長期化することがあります。歯科においては、歯の治療による原因の解消、根管治療、外科的歯内療法などが行われますが、症状が改善しない場合には医科的なアプローチが必要となります。医科歯科共同のアプローチが求められるケースもあるため、治療方針をめぐり患者が混乱することも少なくありません。
治療においては、隣接医科領域の知識に加え、原因である根尖性歯周炎に対する高度な治療が必要とされます。また、医科歯科の連携を適切なタイミングで行うことが重要であります。現在、歯科と耳鼻咽喉科による引き続きの経過観察が必要です。上顎洞は、解剖学的に歯科と耳鼻咽喉科領域にまたがっているため、関連する専門医の共同作業が求められています。
2023年1月31日
義歯洗浄により義歯の汚れが完璧に除去できたとしても、再び装着すれば口腔内微生物との接触は必ず起こる.しかし,洗口や残存歯の清掃により口腔内微生物を減少させ
ることは,清掃した義歯への付着微生物を減少させ,これらの付着微生物に起因するプラーク形成を抑制して口腔環境の向上につながる.すなわち,口腔内と義歯の両方の洗
浄が口腔環境を大きく左右する. 健康な成人に対する臨床試験の結果から,中性電解水は唾液や正常細菌叢への影響がイソジンガーグル液と同等であり,口腔ケアへの応用が可能であるとしている.中性電解水は,既存の義歯洗浄剤や洗口剤とは全く異なり,義歯と口腔内の両方の洗浄が可能であるという点が利点である.口腔内の清掃として, 口腔粘膜や舌の清掃も重要である。 要介護高齢者においては,加齢,薬剤の服用、認識力の低下および口呼吸等により口腔乾燥が顕著であることも多く, スポンジブラシや舌ブラ整えたうえで行ったほうが良い 当分野では,中性電解水の有効成分が希望部位に停留して有効に働くように、中性電解水ジェル の開発・改良も行い,根管に対する洗浄および貼付で根管内の消毒・殺菌に有効であることを報告されている。
2023年1月10日
不適切な処方が原因の抗菌薬の過剰使用は世界的な問題となっており、耐性菌の出現や全身的な副作用のリスク, 医療費の圧迫などが懸念されています。
現在,各国でガイドラインが発表され, 適切な抗菌薬の使用が勧告されています。抗菌薬の使用はあくまで治療の補足的な方法であり, 感染の拡大予防, 全身的な関与を伴う急性根尖膿瘍, 進行性 持続性のある感染症に適応となる。 壊死した歯髄組織には血管は新生せず, 抗菌薬が感染部位に十分に到達しないことから、症状の改善には根管処置行う必要がある。根尖膿瘍においても切開, 排膿などの消炎処置を行い,嫌気環境を改善しないと薬効を低下させてしまうのです。
各国で抗菌薬の使用状況について調査されているが,不必要な処方の要因として, 処置に対する時間不足,患者からの要望といったものが主にあげられます。これらは日本の歯科医療現場でも同様である.歯科医師も簡単に処方しがちであるが,その判断基準は経験的なものが多いのではないだろうか。抗菌薬の使用についてはリスクを伴うことを十分に理解し、患者にその必要性について説明できなければならない. 抗菌薬の使用は、 症状および患者の状態をよく確認し,その必要性を正当化できるかが重要であり, 過剰処方を可能な限り避けることが望ましいと考えます。
2022年5月30日
超高齢社会におけるインプラントオーバーデンチャー(IOD)
近年、インプラントの安定性が得られ、40年を超える長期症例がみられるようになってきた反面,患者の高齢化による身体的制限, 虚弱化により患者が補綴物に適応できなくなるといった問題点も浮き彫りになってきています。ジュネー 大学のMüllerらは、現在と将来の患者に適応するために,固定性インプラント補綴物は、 はじめは 次にスタッドタイプやボール, さらに維持力の弱いマグネットのように、将来のオーバーデンチャーにむけてデザインされるべきであると提唱しています。
超高齢化社会である日本での実態をみてみると,平成28年度の歯科疾患実態調査において, インプラント装着者は65歳以上では約3~4.6%を占める (図20) 2016年に公益社団法人日本口腔インプラント学会が行った調査では、回答があった歯科訪問診療を行っている歯科医師291名が診察した患者 12,356 人の7割はセルフケアが困難な状況であり, うちインプラントを有する360人のうち8割が固定性補綴を有していると報告されています。またインプラントに関したトラブルとしては、47%が清掃困難, 39% がインプラント周囲炎です。
2022年3月25日
「再発性アフタ性口内炎」の臨床所見と治療法
アフタの再発を繰り返す口腔粘膜の炎症を「再発性アフタ性口内炎」(RecurrentAphthous Stomatitis)といい,臨床的には、「小アフタ型」,「大アフタ型」,「疱疹状潰瘍型」
の3型に分類されます
対処法としては,局所の刺激を避け,口内炎パッチの貼付,ステロイド含有軟膏塗布,含嗽,鎮痛菜,漢方薬,活性型ビタミンB2製剤投与など薬物療法,および口腔内を清潔に保っことなどが一般的ですが、しばしば接触痛を伴うため,摂食・会話など口腔諸機能の低下が罹患患者にとって大きな課題となります、レーザー照射療法は,照射部位表面付近の組織に直接作用し,疼痛に対して即時的な鎮痛効果が得られ持続されるものです。
「再発性アフタ性口内炎」の臨床的特徴
①小アフタ型:約80~90%と最も多い頻度であるとされ,径が5mmくらいの浅い潰瘍をいいます、潰瘍の個数は1~5個程度で,症状は軽く,瘢痕を残さずに7~14日程度で治癒します。口層,頬粘膜,舌背,舌側縁など非角化口腔粘膜に発生します。
②大アフタ型:潰瘍の径が10mm以上と大きく,角化,非角化口腔粘膜に発生し,軟口蓋に発生することが多いものです。潰瘍は深く,個数は1~3個で,治癒までの期間は1か月以上に及ぶことが多く,疼痛が激しくしばしば瘢痕を残します。
③疱疹状潰瘍型:ヘルペス性歯肉口内炎に類似した径1~2mmの5~20個(ときに100個)の小潰瘍が非角化口腔粘膜に散在性,多発性に発生します、特に,舌腹,口底粘膜に生じることが多く,潰瘍は7~14日程度で通常瘢痕を残さず治癒します。
2022年2月14日
インプラントオーバーデンチャー(IOD)
最近,固定性インプラント補綴を行った患者がインプラント周囲炎に罹患するケーススが増加しています。インプラント再手術や除去手術が困難である場合も多い。そのような場合、固定推の上部を外し、アタッチメントに交換し可撤性義歯、すなわちIODに変更することが可能です。特に患者が高齢になり介護が必要になる場合のことなどを考えると,固定性よりも可撤性のほうがメインテナンスしやすいという利点もある。また,通常の全部床義歯または部分床義歯のケースにおいても,著しく顎堤が吸収した無歯顎症例やすれ違い唆合などの難症例に対し,インプラントの活用が有効となります。今後ますます社会の高齢化が進むなかで,IODは固定性インプラントからのリカバリーケースや,あるいは最初から欠損補綴のオプションの一つとして、ますます重要な位置付けになると思います。
2021年12月7日
顎関節症は、その病態により4つに分類される。咀嚼筋痛障害(Ⅰ型)の主な病態は、咀嚼筋の持続的収縮による血行障害である。病態診断のためには咀筋の触診が有効であるが、痛みが慢性化すると、痛みを感じる中神経の過敏な状況(中枢性感作)を生じ、症状の改善が難しくなる。顎関節痛障害(Ⅱ型)は、主には顎関節への過負荷による関節内の炎症ある。顎関節円板障害(Ⅲ型)は関節円板の転位や変形によるものであるが、主には転位した関節円板が開口時復位するもの(Ⅲa型)と復位しないもの(Ⅲb型)に分類され、前者はクリック音、後者はクレビタス音を伴うことが多い。後者は復位しない関節円板が開口障害の原因となる(クローズドロック)。ちなみに関節円板の転位について、以前は転位した関節円板を復位させるべく治療が行われていたが、顎関節症症状のない人のMRI画像を調べると、半数以上の人が関節円板の転位や変形が認められることや、慢性の非復位性関節円板転位のケースで関節円板が転位したままでも開口量が増加すること、またそのときに関節円板後部組織が線維化して偽関節円板として機能することが分かり、現在では関節円板が転位していること自体は問題なく、転位したままでの機能の回復を目指すという考えになっている。変形性顎関節症(Ⅳ型)は,顎関節部の退行性病変であるが、診断には画像診断による骨の変形だけでなく臨床症状を生じていることが必要である。
2021年11月22日
外科的歯内療法の成功率はどうでしょうか?
データベースから検索できる論文から得られる成功率は、根管治療と同様、ばらつきがあるため注意が必要である、たとえば、2004年のWangらによる論文では、74%であったと報告されている、この論文では最長8年の予後を含んでおり、長期予後症例が含まれているところは評価されるべきであるが、実際に外科的歯内療法が行われたのは1993~1998年である。90年代は歯内療法、とりわけ、外科的歯内療法に多くの変化がみられた時期で、従来型の歯根端切除術が器具、材料などの変革により大きく変わり、それに伴い、成功率も向上した。歯科用拡大鏡などにより術野を拡大下にて観察できるようになり、従来法では明確にすることが難しかった根管治療後の治癒不良の原因(イスムスや側枝、見逃した根管等)を発見できるようになり、それらを超音波チップにてマネージメントできるようになった原因を除去した後のスペースには、より封鎖性の高い材料としてMTAを使用することにより、高い生体親和性による良好な治癒と、漏洩の多かったアマルガムに比べて、長期にわたり高い封鎖性を維持することが可能になった。これら近年のテクニックにて行った外科的歯内療法の成功率は約91~93%、92.9%1と報告されており、根管治療と同様、現時点で理想的に外科的歯内療法を行えば、その成功率はおよそ93%ということになるであろう。
根尖性歯周炎は細菌感染であるため、治療において心掛けることは、「いかに細菌コントロールするか」に尽きる、術中に無菌的な処置を行うことに加え、辺縁漏洩をいかになくすか、そして根管治療後はすみやかに歯冠修復を行うことも大切なことである。高い成功率が担保されている根管治療を行ったにもかかわらず、歯冠側からの細菌漏洩により病変の治癒が得られないがあってはせっかくの根管治療が台無しである。
2021年10月20日
加齢による姿勢の変化は,全身の筋力の低下、特に等尺性の収縮力低下により生じるもので、さまざまな全身各所の加齢変化を伴っている可能性があります。その一つは、呼吸・嚥下機能を担う喉頭の位置の変そして顎位の変化である.頸椎の前彎がなくなり,頭部の位置が前方へ変化することにより、環軸関節は以前と違う環境にさらされます。そして、舌骨の位置変化なども加わり、そのすべてが顎位に影響を与えている可能性があります。その顎位の要となる顎関節にも、高齢者特有の器質的変化がみられ、顎位は不安定になっていきます。
