ドクターブログ

顎関節症

 ヒトは本来,咀喘・嘸下・会話以外のときには,上下の歯はどこも触れていない下顎安静位を維持していると考えられてきました。しかし,現代を生きる私たちの多くは,社会的要因などにより,長時間上下の歯を触れさせている習慣をもち,場合によっては,顎関節症となることもあります。しかし,この癖(Tooth Contacting Habit : TCH)の是正により,顎関節症症状の改善が認められることは周知の事実となりました。
 次の段階として,顎関節症既往患者の再発予防のためには,どのような歯科治療を行えばよいのかが問われるようになってきました。
 TCH発見に関与した木野孔司元東京医科歯科大学准教授は,「他の動物にはみられない関節円板前方転位がヒトだけに高頻度に起きている」という事実に対して,その原因として「ヒトの関節円板が下顎頭の前方滑走運動を支えるだけの進化をしていないため」と述べ,同じくTCH発見に関与した杉崎正志元東京慈恵医科大学教授は,「関節円板前方転位防止構造がないことを考慮すると,関節円板の位置にこだわるのではなく,疼痛を消失させた機能回復を顎関節症治療の目標にすべきである」と述べています。2人の顎関節研究者の意見から,ヒトの顎関節は,関節円板前方転位を原因とする顎関節症になりやすい宿命にあり,あらかじめ顎関節症予防を導大した歯科治療法が必要と考えます。

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