ドクターブログ

CAD/CAM冠の臨床

 平成26年4月に保険導人されたCAD/CAM冠はこれまで小臼歯への適用に限定されていましたが,平成29年12月に下顎第一大臼歯にまで適用が拡大されました。このようなメタルフリー修復の適応拡大の潮流は,高い審美性を求める患者さんや金属アレルギーに悩む患者のQOL向上を後押ししています。
 しかしながらハイブリッドレジンブロックを用いたCAD/CAM冠は,治療技術としては非常に歴史の浅い修復法であるため予後に関する知見が十分に蓄積されていません。また適応症や術式に関する十分なエビデンスがないことから,実臨床で運用するなかで質を高めていく必要があります。どのように優れた可能性をもつ医療技術であっても適切な症例に適切な方法で適用されなければ淘汰されてしまいます。したがって,CAD/CAM冠が今後国民にとって有用な医療技術として定着するためには,より多くの症例を蓄積するとともに適応症例や術式を科学的に検証し,良好な予後を妨げるトラブルのリスク因子を明らかにする必要があります。
 平成19年4月,疋田らは先進医療(厚生労働大臣が定める健康保険適用外の高度な医療技術を施設基準に該当する医療機関において行われるもの)導人前の試作CAD/CAM用ハイブリッドレジンブロック(シージー社製グラディアフォルテを加圧,加熱重合し加工成形)を用いて製作した小臼歯CAD/CAM冠51装置(患者36名)を6~12ヵ月(平均9.6ヵ月)にわたり観察しています。その臨床試験では,4装置(7.8%)の脱離が装着後3ヵ月以内に生じ,8装置(15.7%)に光沢の消失,3装置(5.9%)に着色がみられた。
 平成26年4月,末瀬は保険導入後から6ヵ月問における小臼歯CAD/CAM冠の短期経過に関する1,178装置のアンケート調査を実施している.その調査結果では,装着後6ヵ月間の脱離が9.0%,破折が2.0%であった.さらにその調査を発展させた1年8ヵ月後の報告では,脱離は24.5%,破折は3.7%みられ,そのうち装着後1ヵ月以内の脱離が43.8%にものぼり,その約半数は1週間以内に脱離していた。
 三浦らは保険導入時から20カ月間にわたる短期後ろ向き調査を実施しています。3種類のハイブリッドレジンブロック(ブロックHC:松風,セラスマート:シージー,Lava Ultimate : 3M ESPE)を使川した小臼歯CAD/CAM冠361装置の調査報告では,脱離は27装置(7.5%)に発生し,そのすべてが装着後1年以内に発生した。なお,脱離以外のトラブルは認められなかった。
 これらの報告に共通する「小臼歯CAD/CAM冠装着後に発生するトラブル」の特徴は,そのほとんどが脱離であり,装着後短期問で発生する点です。したがって装着後早期に生じる脱離を防止することがCAD/CAM冠の長期予後に不可欠であり,その実現のためにはリスク因子を明らかにする必要があります。

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