ドクターブログ

自家歯牙移植を考える

 自分の歯を他の場所に移植する治療法、いわゆる自家歯牙移植は、最近の文献では,臨床家により,移植の成功には移植歯根面の歯根膜の存在,状態が大きく影響を及ぼすことが明らかにされています。したがって,ドナーとなる歯の歯根膜の損傷をいかに少なくし抜歯を行うかが重要であると考えられています。根尖性歯周炎の治療のために意図的再値を行う際,事前に矯正を行うことで術後の生存率が有意に向上したとする報告や,移植歯根面にEMDを塗布することで,より良好な治癒が生じたとする報告が存在しています。これらは歯根膜の損傷を軽減できたこと,損傷した歯根膜の治癒,再生が生じたためと考えられます。
 当院では欠損部の修復治療としてブリッジを選択することは,非常に少なくなってきている.臼歯部メタルブリッジの10年間の生存率は31.9%とする報告が存在している.ブリッジはエナメル質を削合するという不可逆的で比較的侵襲の大きな治療であることや,その平均的な生存率を説明すると,ブリッジではなく義歯,インプラント,移植を希望される患者が増えてきている.それぞれの治療法に偏ることなく,患者のライフステージにあった治療法を提案し、それぞれのメリット、デメリットを説明し最終的には患者さん自身に治療法を選択してもらうことを心掛けています。
 インプラントや移植は隣接歯の侵襲がないという利点だけではなく,強固な咬合支持を得られるという利点に関しても議論の余地はないといえます。ただし,インプラントも天然歯と同様に,経年的に粘膜炎や周囲炎を発症する可能性が報告され、また,われわれ臨床医にとって一度インプラント周囲炎が発症すると,フィクスチャーの表面の形態,性状から感染源を完全に取り除くことは容易ではなく,その治療法のコンセンサスは十分に得られていな
いことは非常に大きな問題であるといえます。また,インプラント治療は歯牙の移植に比べ,一般的に高額な治療費になることもデメリットといえるでしょう。
 われわれは不可逆的な治療に入る前に診査診断を行い,治療計画を立て,それらの治療法のメリット,デメリットを患者に十分に説明し,治療法を選択してもらうことが大切であると考えます。

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