ドクターブログ

睡眠時かみしめ

 睡眠時のブラキシズムは睡眠障害国際分類第3版によると、[睡眠関連逆動異常症]に分類され,「食いしぼりや歯ぎしりあるいは下顎の強張りや突出しのような特徴のある反復性の顎筋活動」と定義されています。一般集団の約80%が睡眠時ブラキシズムに罹患しており,健常成人でさえ約60%に律動性咀嚼筋活動(Rythmic masticatory muscle activity : RMMA)が観察されると報告されています。その力学的特性は特異的なものであり,咀嚼運動のような覚醒時の機能活動とは異なる様相を呈しています。覚醒時の最大咬合力は体重と同程度であると報告されていますが、睡眠時ブラキシズムではその覚醒時の咬合力を超える力を発挿する者もいます。このような過剰な負荷が,咬頭嵌合位だけではなく,さまざまな咬合位で発揮されます。
  一般に睡眠時ブラキシズムではクレンチング(食いしばり)とグラインディング(歯ぎしり)が観察されます。そのなかで,睡眠時ブラキシズムにおけるクレンチングは,咬頭嵌合位付近だけでなく,そこから1mm以上離れた偏心位で行っている症例も存在します。グラインディングにおいては,咬筋活動様式は咀嚼運動のものと類似しているが,涙滴状の下顎運動を行っているものはほとんどなく,ランダムに左右の滑走運動を行っています。このような特異的な運動が,歯の咬耗,補綴装置の脱離・破壊,歯周病の増悪,顎関節症などを引き起こすものと考えられます。

摂食嚥下リハビリテーション

 摂食嚥下リハビリテーションにおいて,歯科医療職の活動の重要性は広く認識されており,今後ますますニーズが増えるものと予想されます。しかしながら,歯科医療がその期待に十分に応えるために解決すべき課題は少なくありません。そのーつが,口腔機能の低下に対するリハビリテーション的な取り組みの普及です。
 高齢の摂食嚥下障害患者さんの多くは歯の欠損を有しており,それに対して,歯科医師は有床義歯などの補綴装置を製作する。健常高齢者の場合,歯・歯列・咬合などの形態回復がただちに機能回復に結びつきますが,摂食嘸ド障害患者は何らかの機能障害を有しているため,その効果がただちに現れないことが多い。そこでまず,歯科医師は,咀嚼・嚥下・構音といった主要な口腔機能の問題点を把握し、歯科的な手段(補綴治療,摂食機能療法)を検討する必要があります。
 咀嚼・嚥下・構音において必要不可欠な運動器としての舌の効果は,歯列,歯肉,口蓋(あるいはそれらを回復する補綴装置)といった,固有口腔を形成する周囲組織との調和の目こ成り立っています。すなわち,舌はそれらの周囲組織に接触することにより圧を生じ,その圧によって,食塊の形成・搬送やさまざまな構音が可能となる.そこに歯科医師が「舌圧」を通して舌機能を診る意義があると考えます。

東京矯正歯科学会セミナー

平成29年11月16日(木)東京矯正歯科学会秋季セミナーを受講してきました。

フッ化物の応用

 小児期のむし歯予防の手段にはさまざまなものが考えられますが,歯科医師や歯科衛生上などの専門家による予防手段として代表的なものは,「フッ化物の局所応用」と「シーラント」です。
 フッ化物によるむし歯予防は,すでに1945年から世界保健機構(WHO)を通じて推奨されてきており,これまでも数多くの疫学データによりその有効性が示されています。多くの欧米諸国では,フッ化物の応用が最も有効なむし歯予防手段として認識,推奨されており,全身応用や局所応用が積極的に推進されてきました。わが国においては,以前はフッ化物の全身応用や集団応用に関して賛否両論が出ていたことから,個人レベルでの局所応用にとどまっていた感がありますが,1999年以降,日本歯科医学会や厚生労働省,目本学校歯科医会などにより声明が出され,適正なフッ化物利用によるむし歯予防の有効件が示されたことから,応用の範囲が広がってきています。
 フッ素はもともと食品(魚の皮や骨,茶,海草などに多い)や飲料水中にも含まれている微量元素であり、リスクや批判を警戒して排除すべきものではありません。一方,フッ素(フッ化物)のみに頼っ
てむし歯予防をはかろうとする考え方は,食習慣や口腔清掃習慣などの基本的な生活習慣の確立への関心を低下させるおそれもあります.むし歯予防ばかりでなく,口腔と全身の健康増進という視点からのフッ化物の応用が望まれます。
 診療場面でのフッ化物の応用は,主として「歯面塗布」と「洗口(処方および指導)」であり,歯面塗布は一部保険診療にも取り入れてきています。
 フッ化物の歯而塗布は,比較的高濃厦のフッ化物(9,000ppmF)が用いられ,萌出直後の歯への塗布がフッ化物の歯面への取り込みやむし歯予防の面から最も効果的と考えられます。また,子どもの口腔
環境や,保護者の予防への関心度などを十分考慮して行う必要があります。
 定期的な口腔管理を行いながら,歯の萌出状態やう蝕感受性の高さなどにあわせて歯面塗布を行うことが望まれます。乳歯では,乳切歯が萌出完了する1歳頃,上下顎の第一乳臼歯が萌出する1歳6ヵ月頃,第二乳臼歯が萌出する2~3歳頃を中心に塗布を行っていくことが有効と思われます。余剰のフッ化物をきちんと拭き取れば安全性に問題はないため,乳歯萌出開始時から応用可能とも考えられますが,下顎乳切歯は唾液で自浄されやすいことから,
上顎乳切歯がある程度生えてくる1歳頃からでも遅くないでしょう。永久歯では,萌出時期の個体差も人きいため,第一大臼歯萌出時期,永久前歯萌出時期,小臼歯萌出時期,第二人臼歯萌出時期にあわ
せて,適当な問隔(3~6ヵ月に1回)で塗布を実施するといいでしょう。
 市販されている歯面塗布川フッ化物は,フッ化ナトリウム(NaF)かリン酸酸性フッ化ナトリウム(APF)で,剤形としてはシェル状,液状,泡状などがあります。シェル状のAPFが子どもには用い
やすいでしょう。塗布方法には通常は簡易防湿下に小綿球で塗布を行います。低年齢児では,歯ブラシによる変法が用いられることも少なくおりません。トレー法は通常,乳歯列完成期以降の子どもに用いられますが.トレーのサイズを歯列の人きさに適合したものにして,溶液やシェルの使川はを適切にすることや,最後に余剰分を拭き取るなどして残留量を減少させる配慮が必要です。綿球法による歯面塗布は塗布後は60分くらい,うがいや飲食を禁じて薬剤の効果を持続させます。

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