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舌苔について

 舌の表面には通常、舌苔という付着物が存在します。舌苔は,舌の特殊粘膜である糸状乳頭が脱落した細胞片と,口腔微生物の凝集塊である。糸状乳頭は新陳代謝が旺盛で,3~7日で新しいものにとってかわられます。
 口腔粘膜は,通常14日程厦で新しいものと入れ替わります。そのスピードは,皮膚とは異なり非常に速い。なかでも舌背の糸状乳頭は前述したようにそのスピードが速く,3~7日のサイクルとされる。剥離した糸状乳頭の古い組織片は細菌などとともに集積し,舌苔を形成します。
 舌苔の形成機序は実験的には解明されておらず,傍証からの推論の域を出ないため,根拠は弱い、一般的に考えうる形成機序については,唾液中に含まれる脱落上皮細胞に細菌が作用し,細胞の破壊が進み比重が重くなり,舌乳頭に沈殿するようになります。この沈殿の細胞タンパクや細胞に付着する細菌などの産生物が舌苔の付着因子となります。
 さらに舌苔の成長因子として,口腔上皮の代謝回転,歯周病,口腔内微生物,舌上皮細胞の過角化などが関与しています。最近になって,舌上皮細胞を維持し,障害時に修復も担当する舌幹細胞か同定されました。
 舌苔は通常,薄い白色です。前述の舌苔形成機序によって生じた,いわば生理的舌苔ですが,その発生要因は,①舌の摩擦に関与する粗大な固形食餌の摂取が制限される消化器疾患,睡眠,昏睡、②舌の摩擦に関与する咀嚼運動を低下させる睡眠,昏睡,口腔内疼痛性疾患の存在,③舌の摩擦に関与する舌運動を低下させる睡眠,昏睡,口腔内疼痛性疾患,口呼吸,舌の神経麻痺、④唾液分泌を低下させる唾液腺疾患,分泌神経障害,薬物障害,睡眠,昏睡,発熱,脱水,神経性興奮、⑤舌の湿潤を低下させる口呼吸,脱水、⑥舌栄養に障害をきたす低タンパク症,貧血、ビタミンの欠乏、⑦口腔内細菌叢に変化を生ずる口腔感染,抗生物質使用、⑧舌上皮の剥離を起こす炎症性疾患,アレルギーなどがあります。

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