ドクターブログ

MTAセメントという覆髄材

 普段のカリエス治療の中で虫歯を取り除く際に、大きく穴が開き歯髄が露出することがよくあります。このような場合、抜歯するか直接覆髄するかについて毎回悩むものですが、私は「最良の根管充填材は患者自身の歯髄である」という信念のもと、MTAセメントを用いた直接覆髄を積極的に行っています。
最近、ネオ製薬工業から、「キャビオス」という光重合型裏層材の改良版である「D-キャビオスMTA」が発売され、試用する機会を得ました。元のキャビオスは、歯の硬組織成分であるα-TCPと混ぜ合わせた材料で、生体親和性が高い素材ですが、露髄した場合は使用できませんでした。 しかしながら、D-キャビオスMTAは、a-TCPの代わりにMTAを含有しており、新製品として直接覆髄材として承認されています。偶発的な露髄に直接覆髄を行う場合、ラバーダム防湿と止血が必要であることに留意し、露髄面が2mm以内である場合に成功すると考えられます。作業環境が整ったら、歯髄に圧力をかけないように生理食塩水で洗浄消毒し、止血後に適量を充填して硬化させます。他のMTA製品よりも硬化後に硬さを感じ、曲げ強さや圧縮強さなど十分な強度があることが確認されました。また、高いX線造影性も持っています。

難治性姿勢上顎洞炎

 難治性の歯性上顎洞炎は、上顎洞内で起こる炎症であり、感染によって排泄物が自然口を通り鼻腔内へと排泄されます。上顎洞内には多列繊毛上皮で覆われた粘膜が存在し、健康な状態では上顎洞内に生息する菌もこの繊毛運動によって除去されます。しかし、炎症が持続し、自然口の封鎖や繊毛運動機能の低下が生じると、排泄がうまく起こらず、炎症は長期化することがあります。歯科においては、歯の治療による原因の解消、根管治療、外科的歯内療法などが行われますが、症状が改善しない場合には医科的なアプローチが必要となります。医科歯科共同のアプローチが求められるケースもあるため、治療方針をめぐり患者が混乱することも少なくありません。
 治療においては、隣接医科領域の知識に加え、原因である根尖性歯周炎に対する高度な治療が必要とされます。また、医科歯科の連携を適切なタイミングで行うことが重要であります。現在、歯科と耳鼻咽喉科による引き続きの経過観察が必要です。上顎洞は、解剖学的に歯科と耳鼻咽喉科領域にまたがっているため、関連する専門医の共同作業が求められています。

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