ドクターブログ

ボンディング

 化学と書いて「バケ学」と読みますが,化学合成は文字通り錬金術のように、様々な機能をもった有機物を産み出します。その有機化学が歯科診療にもたらした革新,それがボンディング(接着)です。
 エナメル質表面を酸処理した後にぬれ性に優れた液状レジン(メタクリル酸誘導体機能性モノマー)を塗布し重合させるーこのエナメルボンディングは,機械的嵌合効力を原理とするものでブオノコア(M.G.Buonocore)によって1955年に確立されました。コンポジットレジンに先駆け,矯正用ブラケットのダイレクトボンディングに応用され,1970~80年代には,接着ブリッジやポーセレンラミネートベニアへと応用範囲を拡げました。
 1980年代になってデンティンボンディング(象牙質接着)が登場しましたが,これはエナメルボンディングとはまったく異なる仕組みのものです。なにしろエナメル質が無機質のハイドロキシアパタイトであるのに対して,象牙質は生きた細胞とコラーゲンからなる水分に富んだ組織です。さらに象牙細管を通じて水分が中から浸出してきます。しかもコラーゲン線維と水分を含むめ,回転切削によって窩壁には削りかすの層(スメアー層)ができます。これを酸によって除去すると,そこにモノマーを浸透させることで接着力が得られました。このため,まず,エナメルボンディングそっくりの嵌合効力セオリーが信じられるようになりました。

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