ドクターブログ

骨粗鬆症とパノラマレントゲン写真

 わが国では高齢者の増加に伴い,骨粗新症の患者数は約1,280万人と増加の一途をたどっています。そのうち約80%は女性であり,50歳以降は閉経後骨粗鬆症が急増することが知られています。また,骨密度が若年者平均量(YAM)の70%未満で骨粗鬆症と診断されますが,この基準では75歳以上の女性のうち半数以上が骨粗鬆症であると推定されています。なお、骨粗鬆症の関連骨折である大腿骨頚部骨折は1987年の全国調査において年間約5万人でしたが,2012年には年間約17万人と急速に増加しています。本骨折は寝たきりの原因となるばかりではなく,受傷後の生命予後を短縮させるため,医療経済的問題と併せて大きな社会問題とも考えられています。
 このような背景から、当院ではおおむね50歳以降で骨粗鬆症のために骨折を起こす可能性が高い女性を早期に発見して有効な予防手段を講じること
により,住民の健康寿命の延伸に歯科領域から貢献することを目的とした取り組みを行っています。
 パノラマX線写真において下顎骨皮質骨の形態が高度変化(3型)を示すものは,骨粗鬆症性骨折の発症リスク,特に非椎体骨折リスクが約8倍あり,将来の骨粗鬆症性骨折の発症リスクを推測する手段として有用であることがワシントン大学のBollen,Taguchiらにより示されています.パノラマX線写真における下顎骨下縁皮質骨の形態については,田口らの方法によるとI~3型に分類されますが,骨密度が正常である場合、下顎骨の皮質骨形態の内側表面はスムースであり(I型),低骨密度の場合には下顎骨の皮質骨形態が高度粗粗鬆化(3型)を示すとされています。
 こうしたことから当院ではパノラマX線写真による骨粗鬆症スクリーニングにより,おおむね50歳以降の女性の骨粗鬆症のリスクを予備的に判定し,医科への受診勧奨を行っています。

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