ドクターブログ

義歯の長期使用による変化

義歯の調整は日常の歯科臨床において,最も高い頻度で行う診療行為の一つである。8020運動の効果により義歯装着者の割合は減っていると思われますが,最近のデータでも多くの高齢者が義歯を装着しています。さらに今後,高齢者の増加により義歯の総数自体は増加するものと予測されます。
 また最近,義歯の装着にとってあまり条件のよくない症例(たとえば高度に骨吸収し,粘膜が非薄な顎堤)が増加しているように感じます。そのため,装着後の義歯の調整に苦慮されている先生方は多いのではないでしょうか。場合によっては義歯製作よりも,調整に多くの時問と労力を費やすこともあるかと思われます。また,特に部分床義歯では新義歯装着時など,口腔への装着が困難な場合もあります。
 義歯を長期にわたり使用すると,人工歯が咬耗し,咬合高径の低下,咬合の不調をきたします。その結果,咀嚼時の疼痛,咀嚼能率や維持・安定性の低下などが生じます。材質別では陶歯や硬質レジン歯に比べ,レジン歯は咬耗しやすく,また非咀嚼側に比べ咀喘側で咬耗しやすい.特に臼歯部人工歯の咬耗が顕著な症例では,下顎前歯部が上顎義歯を突き上げることにより,上顎前歯部におけるフラビーガムの形成を助長する。部分床義歯では正しくクラスプが設計されていても,繰り返しの着脱により永久変形や鈎腕の摩耗などが生じ,維持力の低下が生じます。
 一方,上述した義歯自体の変化と同時に生体側にも変化が生じる.生体側の変化としては顎堤や鈎歯などの残存歯の変化などがあります。義歯を支持する顎堤は常に生理的な骨吸収を生じており,義歯装着当初は維持・安定が良好でも,経年的に義歯床粘膜面と義歯床下粘膜との適合性は低下し,義歯の維持・安定性も低下します。糖尿病などの全身性代謝疾患によりさらに骨吸収は助長されます。
 このような状況下では,義歯床下粘膜における咀喘圧の分布は不均等になっており,疼痛,粘膜の変形,褥瘡性潰瘍が生じ,骨吸収が加速する.また,この不適切な義歯の長期使用による慢性的な機械的刺激により,フラビーガムや義歯性線維症が引き起こされることもあります。
 

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