ドクターブログ

歯科と健康寿命

認知症に至る経過として,歯の喪失によリ咀嚼機能が低下し,脳への刺激が減少することで脳の認知領域の退行|生変化が起こ
り,認知症になりやすくなる可能性があります。また,咀嚼機能低下によって噛みづらい生野菜などを避けるようになり,ビタミンなどの栄養不足が生じることで認知症発症リスクが高まることも考えられます。さらに歯周病は歯の喪失原因であるとともに歯周組織の慢|生炎症を引き起こすため,さまざまな物質が血液を介して脳に影響し,認知症の発症リスクを高める可能性もあります。
 歯を喪失して義歯を使用しないと,しっかり噛み合わせることができなくなるため,下顎が不安定となる.下顎の不安定は
頭部の不安定を招く。その結果,身体の重心が不安定となり転倒リスクが上昇する可能性があります。
 その他,多くの研究で指摘されているとおリ,歯周病から脳血管疾患,心疾患および糖尿病への経路があり,そこから要介護リスクが高まる可能性があります。
 要介護となる原因のうち,歯科口腔保健との関連が考えられるものを合計すると55%となる。これに近年,口腔との関連が指摘されている呼吸器疾患(2.4%)を加えるとさらに構成割合は増える。いずれにしても,要介護となる原因の半分以上が歯科口腔保健と関連するといえます。
 近年の研究で,健康な歯を多く保つことが要介護状態を防止して健康寿命を延ばすことにもつながる可能性が明らかになってきました。しかし,直近の歯科疾患実態調査(2011年)において平均20歯以上であるのは69歳までで,要介護者が増える70歳以上では20歯を下回っていることが示されている.8020運動が国民に浸透し,保有歯数が増えてきたものの,健康寿命を延伸するためにさらに歯を残す努力が必要であるといえます。
 永久歯の主な喪失原因は歯周病とう蝕です。歯周病予防には歯間部のブラッシング,う蝕予防にはフッ化物応用など,すでに科学的に有効性が評価された手段があります。これらの予防方法の普及を通じ,人々の健康寿命を延伸のために歯科の役割がますます大きくなっている.

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