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エナメル質形成不全

 歯質の形成異常はエナメル質に最も多く起こり,その症状は多岐にわたるが,ほとんどの場合におい小児期の歯の萌出とともに存在が明らかとなります。しかし,エナメル質の形成障害は小児期だけでなく,将来の不正咬合や歯の疾患に大きな影響を及ぼす可能性が大きいため,その症状を断片的に捉えてはなりません。小児期の患者は成長過程にあるという観点から,現在の症状を経過点の症状と考え,小児期からの管理と加療を行う必要があります。
 歯は一度形成されると,骨のような再形成がなく,障害は歯に刻まれます。特に,エナメル質の形成障害は萌出途中の発育異常であり,しばしば全身的な疾患の一症状を示すということを忘れてはいけません。
 エナメル質形成障害の原因を人別すると,「遺伝子に起因するもの(遺伝的要因)」と「遺伝子に起因しないもの(全身的要因,局所的要因)」,「原因不明のもの(第一大臼歯・切歯限局性エナメル質形成不全)」に分かれます。遺伝子に起因するものは遺伝性エナメル質形成不全症であり,すべての歯が罹患し,血族内で遺伝します。後者はエナメル芽細胞の機能が障害されたために引き起こされるエナメル質減形成,あるいは石灰化不全のことをいい,総じて「エナメル質形成不全」と呼ばれています。
 一方で,エナメル質形成不全の存在が近年になって明らかになった.実のところ,罹患している患者は予想以上に多いにもかかわらず,日本における原因不明のもの(第一大臼歯・切歯限局性エナメル質形成不全)の認識度は低い.われわれは,このエナメル質形成不全を,う蝕や単なる着色として見誤ったり,見過ごしたりしてはいないだろうか。

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